私たち夫婦は2年4か月間旅をして、イスラム教の国(イスラム教徒が多数を占める国)にもいくつか行きました。
行く前まではどんな服を着ればいいのかわからなかったし、行ってから迷ったことも色々あるので、これから行く人の参考になればと思い、わたしの経験を元にイスラム教の国に女性旅行者が行くときの服装や、気をつけていたことなどについてまとめました。
私たちが旅行したイスラム教の国は、バングラデシュ・パキスタン・新疆ウイグル自治区・イラン・トルコ・モロッコ(訪問順)で、主にこれらの国のことについて書いていきます。
現地の女性の服装
イスラム教の国での女性の服装は国によって大きく異なり、その中でも地域差があり、さらに個々人でもかなりの差がありました。
全身を覆う真っ黒な服(ブルカ・チャドル・アバヤ・二カブなど)を着ている人もいれば、髪の毛を覆うスカーフ(ヒジャブ)以外は日本人女性と同じような格好をしている人もいます。
おしゃれをしたい人はヒジャブの色や巻き方を変えてみたり、許されるギリギリまで崩して着たり、見えている部分で最大限魅力をアピールしたりと、彼女たちなりに工夫しているように見えました。
傾向としては、どこの国も年配の女性のほうが敬虔なイスラム教徒が多かったように思います。
イランでは、通りすがりの年配の女性が、若い女性のヒジャブのかぶり方を注意する、というシーンも見ました。
「最近の若者は…!」と年配が憤慨するという図は、世界どこでも変わらないようです。
イスラム教の女性への考え方
そもそも、イスラム教の女性(ムスリマ)はなぜ肌や髪の毛を隠すような格好をしているのでしょうか。
イスラム教には「女性は美しくて大切に扱わなくてはいけないもの」という認識があり、同時に「男性は女性の性的な誘惑に弱いもの」という認識もあります。
そのため、女性が美しい部分を隠すことによってその身を守り、また男性に変な気を起こさせないように、あのような服を着ていると言われています。
女性差別や女性軽視と諸外国から言われることも多いし、実際に抑圧されていると感じるムスリマがいるのも事実ですが、信仰心の証や誇りとして自ら望んで着ている女性も多くいるので、わたしはどちらが正しいとは一概には言えないと思っています。
また、イスラム教の国を旅行する側としては、非イスラム教徒だとしても、その国の文化や宗教の教えがあるということを尊重することや、トラブルに巻き込まれないようにできるだけ配慮をすることが必要だと思います。
女性旅行者がイスラム教の国でするべき服装
- 体の線を隠す……お尻や胸、脚の形がわかるようなぴったりとした服ではなく、体の線が隠れるような服を着る。
- 胸元を隠す……胸元が開いた服は着ない。胸の形がわかるような服のときはスカーフなどで隠す。
- 腕や脚を隠す……スカートやショートパンツ、半袖などの服は着ない。
イスラム教の女性はヒジャブ(頭に巻く布)をかぶっているイメージがあるかもしれませんが、旅行者がそこまでする必要がない国も多いです。
イランのように外国人にもヒジャブの着用を義務化している国もありますが、そもそもコーランには髪の毛を隠せとは明言されていないらしく、イスラム教徒でも個人の考えに委ねられるところだからだそうです。
わたしはイランとパキスタン、それからその他の国の宗教施設に入るときには頭にスカーフを巻いていました。
まずはある程度の体の線が隠れるような服を準備し、その後は現地に行って女性たちがどのような服を着ているかを観察してから、その服装を真似る、もしくは新しく服を購入するのがいいと思います。
日本から服を持っていくとしたら、お尻まで隠れて透けないトップス(シャツ・ブラウス・チュニックなど)、ゆとりがあって通気性が良いボトムス、それから薄くて大判のスカーフがあるといいですね。
色はできれば黒など目立たないもののほうが無難だと思います。
ちなみに、イスラム教の国では、男性にも人に見せると良くない部分があるらしいので、半ズボンを履いている男性はほどんど見かけません。
男性旅行者も、基本的には長ズボンを履くようにするといいと思います。
現地の人の服装の写真と、わたしの服装
私たちが訪れた国の、現地の人の服装の写真と、その国を旅したときのわたしの服装をまとめました。
どんな服を着ているのかの参考にしてみてください。
ちなみに、宗教施設に入る際にチャドルやスカーフなどの着用が必須の場合がありますが、多くの場合貸し出しがありました。
バングラデシュ
滞在日:2017年3月
現地の人の服装
バングラデシュの女性たちは、サロワ・カミューズという伝統衣装を着ています。
とても華やかで、色へのこだわりを感じました。
街を歩いているのはほとんどが男性でしたが、公園では若いカップルがデートを楽しむなど和やかな雰囲気もあります。
バングラデシュでは外国人が珍しいので、歩いているとかなり注目を浴びますが、気軽に声をかけてくれるフレンドリーな人たちが多かったので楽しく街歩きができました。
わたしの服装
ダッカでは基本的に長袖長ズボンで過ごし、スカーフはかぶっていませんでした。
胸元がぴったりしている服なら、胸が隠れるようにスカーフを巻いたほうがいいと思います。
わたしは、このときに持っていたゆるい長袖の服がマウンテンパーカーしかなかったので(持っていたロンTは細身の白だった)、したかなくそれを着ていましたが、サウナみたいに暑かったです。
バングラデシュにはカラフルでかわいいサロワ・カミューズがお手軽な値段でたくさん売っていたので、お土産に買うのもおすすめです。
▼ダッカのスターモスクにて。
https://unusual-web.com/?p=16454
パキスタン
滞在日:2017年5月
現地の人の服装
パキスタンではそもそも女性があまり外を出歩いていなかったので、女性が写っている写真はほぼありません。
いたとしても早足で、視線を避けて去っていくような感じだったと思います。
そんな雰囲気なので、外国人女性であるわたしは歩いているだけでものすごい視線を浴び、特に人が多いラホールではピリピリとした空気も感じて、常に緊張状態でした。
ちなみにパキスタンの男性は、長袖シャツにスラックス、または写真のような伝統衣装(男性用のサルワール・カミーズ)を着ていました。
わたしの服装
ラホールでは、長袖長ズボンにスカーフを頭に巻いていました。
40℃近い暑さだったので、ダッカで着ていたマウンテンパーカーはさすがに着られなくなり、夫の紺のロンTを借りていました。
ただ、このロンTだと体の線が出ていたのか、ものすごい視線を浴びたので、もう少しゆるいトップスを着なければいけなかったのかもしれません。
女一人でラホールに数回行ったことのある友人は、ラホールに着いたらすぐに仕立て屋さんに行って、服を仕立ててもらうと言っていました。
▼ラホールにて。暑いし、視線が痛いしで、早く宿に戻りたかった。
マンディー・バハーウッディーンでは、ラホールで偶然会ったパキスタン人の方の家に泊まらせていただきました。
そのときにサルワール・カミーズをプレゼントされ、以降はそればかり着ていました。
▼マンディー・バハーウッディーンの豪邸にて、いただいたサルワール・カミーズとレギンス、奥さんのお古のヒジャブを身に着けて。
ギルギットでも基本的にはヒジャブも巻いていましたが、国際的な感覚を持つ宿のスタッフたちと出かけたときは外していました。
今思えば、いただいたサルワール・カミーズはかなり深めにスリットが入っていたので、ボトムスはレギンスではなくもっとゆるめのものを履いたほうがよかったかもしれません。
どちらにしろ、この服でラホールに行く勇気はありません……。
▼ギルギットで宿のスタッフたちと出かけたときに見つけた岡田准一似の男性と。
フンザでは、イスラム教のイスマイール派という比較的戒律がゆるい宗派を信仰しているらしく、スカーフをしていなくても特に視線などを感じることがなかったのでリラックスして過ごすことができました。
https://unusual-web.com/?p=21147
新疆ウイグル自治区
滞在日:2017年6月
現地の人の服装
新疆ウイグル自治区は、中国の最西部にある、イスラム教徒であるウイグル族の人たちが主に住む自治区です。
ウイグル自治区に住む人たちは、他のイスラム教の国とは違う独特な伝統衣装を着ていて、体の線や肌を極力隠そうという空気はあまり感じませんでした。
わたしの服装
ウイグル自治区では、長袖長ズボンで過ごし、スカーフはしていませんでした。
ウイグル自治区には、漢族や他の少数民族の人も住んでいて多様性があるためか、常識の範囲内であればどんな服を着ても特に問題はなさそうでした。
https://unusual-web.com/?p=22415
イラン
滞在日:2017年8月
現地の人の服装
イランは、外国人にもヒジャブの着用を義務化している国です。
厳格な国のようですが、首都テヘランの女性はずり落ちるギリギリまでゆるくヒジャブをかぶったり、金髪に染めたり、化粧がバッチリだったり、鼻の整形手術をしたり(笑)と、おしゃれを楽しむ女性がたくさんいました。
ぴったりしたジーパンにマント(お尻まで隠れる羽織のようなもの)を着ている女性が多かったです。
▼モスクでは全身を覆うチャドルを着る。
わたしの服装
テヘランから入国し、最初は紺のロンTと長ズボンにスカーフを頭に巻いて過ごしていましたが、40℃近い暑さだったのと、ファッション的にあまり出歩きたくない格好だったので、テヘラン滞在中は家に泊めてくれたイラン人女性にマントを借りていました。
▼テヘランにて、イラン人女性に借りたマントを着て。
その後、ヤズドで自分のマントを購入しました。
薄いマントは涼しいし、中に半袖を着てもいいし、ロンTよりもふわっとしていて体の線も目立たくなるので、かなり楽になりました。
▼ヤズドで購入したマント。
買った当初は、上の写真のようにマントの下にレギンスを履いていましたが、なんとなく視線を感じたので、ズボンを履くようにしました。
この格好が周りの視線と自分の快適さから考えて一番しっくりきたので、これでやっとイランで服装のことを気にせず堂々と歩けるようになりました。
▼ボトムスをズボンに変更。マントは本当は前を留めたほうがいいかも。
▼シーラーズの宗教施設で借りた花柄のチャドル
https://unusual-web.com/?p=22859
トルコ
滞在日:2017年9月
現地の人の服装
トルコは政教分離の国で、他のイスラム教の国よりイスラム感はやや緩めです。
街にはヒジャブをつけている人もいれば、ノースリーブの人がいたりと、人によって様々でした。
▼モスク内でもこの格好が許されるのはトルコくらい?
わたしの服装
トルコでは基本的に長袖長ズボンで過ごしていて、たまに半袖も着ていました。
ストールもかぶっていません。
トルコは外国人旅行者が多いため、普通の街歩きなどの服装はそれほど気を遣わなくてもよさそうでした。
https://unusual-web.com/?p=26647
モロッコ
滞在日:2018年3~5月
現地の人の服装
3~5月で肌寒かったため、厚めのジュラバを着ているモロッコ人が多く、女性はさらにヒジャブをかぶっていました。
若い女性は、ジーパンに長めのトップスという格好の人もいました。
わたしの服装
モロッコは少し肌寒かったので長袖長ズボンで過ごしていて、暑い日は半袖を着ることもありました。
スカーフはかぶっていません。
旅行者が多いため、かなりラフな格好をしている外国人も見かけますが、一応配慮はしたほうがいいと思います。
服装以外に気をつけていたこと
写真をなるべく撮らない
イスラム教の人の中には、写真を撮られることを嫌がる人がいます。
もちろん自分から「一緒に写真撮ろう!」と声をかけてくれる人もいますが、特に女性は撮られることを嫌う人もいるので、むやみやたらに撮らないほうがいいです。
写真を撮るときは許可をとったり、顔が写らないタイミングを見計らって撮るといいと思います。
また当たり前ですが、男性でも物でも場所でも、嫌そうな顔をされたら撮るのを控えましょう。
握手をしない
挨拶をするときや感謝をしたいときに現地の異性に握手を求めると、断られることがあります。
むやみに異性が触れ合うことは良くないとされているからです。
わたしも手を差し出して断られたあと、「そうだった!」後悔したことが何度かあります。
断られると少なからずショックだし、断る方も嫌だと思うので、手を差し出されたとき以外は握手以外の方法でコミュニケーションを取るといいと思います。
同性の隣に座る
公共交通機関などで席につくとき、現地の人は女性は女性の隣に、男性は男性の隣に座るように配慮していました(そもそもイランは車両が男女で分かれていました)。
わざわざ席を立って移動してくれることもよくありました。
現地の人の行動を見てこのような行動をしていたら、旅行者も男女ともに配慮すべきだと思います。
わたしもしばらくそれが習慣になっていたので、イスラム教の国を出たあとも女性の隣を探して座るような癖が少しの間抜けませんでした。
女性ひとりで出歩かない
女一人旅の人は、できるだけ誰かと行動したほうがいいと思います。
パキスタンでわたしが宿の近くを一人で歩いていると、夫といるときはいつも声をかけられないのに、その日は何人にも声をかけられたり、一緒に写真を撮ってくれと言われたり(そのときにちょっと体を触られたり)、耳元で言葉を囁かれたりしました。
モロッコでは、夜(21時頃)一人でバスターミナルに向かっていたとき、何人にも声をかけられ、あからさまに誘ってくる人もいました。
ずっと後をついてきた人にはキツい言葉で追い払ってしまいましたが、もし逆ギレされて襲われていたらと思うと怖いです。
これらはすべて夫と一緒に歩いているときには起こらなかったことなので、女性が一人で歩くとここまで違うのかと、違いに驚きました。
女性一人でイスラム教の国に行く場合は、よりいっそう服装に気を遣い、夜は特に気をつけてください。
さいごに
イスラム教の国で、周りから変な視線(外国人だから目立つという理由以外の)を感じた気がしたら、着ている服がダメだったかな?なにか変なことをしたかな?と敏感に察知して、考え直してみることが大事だと思います。
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