フランスで過ごす日本人妊婦が気をつけるべきトキソプラズマ症について

フランスで過ごす妊婦が、日本にいるときよりも気をつけなければいけない感染症、トキソプラズマ(仏:Toxoplasmose)について、予防法や避けるべき食品など詳しく調べてみました。

素人が調べてまとめた内容のため、ここに書いてある情報を鵜呑みにせず、必要な場合は適切な医療機関を受診し、医師に確認してください。

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トキソプラズマについて

先天性トキソプラズマ症とは

トキソプラズマ症は、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)という原虫による感染症です。

健康な人がトキソプラズマに感染しても、80%は何の症状もなく、発病したとしても発熱や筋肉痛などの軽い症状が一時的に出る程度のようです。
一度感染すると抗体が形成され、免疫を得ることができます。

しかし、妊婦が初めて感染した場合、トキソプラズマが胎盤を通じて胎児に感染し、胎児に先天性トキソプラズマ症を引き起こす可能性があります。

妊婦が初感染した場合、感染時期によって違いはあるようですが、約30%が胎盤を通して感染し、数%~20%の胎児に先天性トキソプラズマ症が発症してしまいます。

妊娠初期の感染ほど重症化しやすく、妊娠後期ほど感染率は高くなるようです。

感染した胎児は、胎内死亡や流産の他に、脳や眼の障害などが生じることがあります。
水頭症、脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害など、症状やその重さはさまざまで、生まれてすぐに症状がなくても、成長するにつれて症状が出てくることもあるようです。

フランスの先天性トキソプラズマ症

フランスでは、妊娠するとすぐにトキソプラズマ抗体検査の血液検査をします。

結果が陽性(Positif)なら、以前トキソプラズマに感染したことがあるため、免疫があります(感染が妊娠前なのか妊娠後なのかを知るための追加検査が必要かも?)。

陰性(Négatif)なら、これ以降トキソプラズマに感染しないよう十分注意しながら、出産まで毎月血液検査をしなければなりません。

フランスは世界的にもトキソプラズマに感染している人が多い国だと言われていて、免疫がある人は全体の約80%(何年の情報かは不明)を超えているそうです。

フランス国民健康保険の公式サイトAmeliによると、免疫がある妊婦の割合は37%(2010年)で年々低下傾向にあるようですが、一方日本で免疫がある妊婦の割合はたったの10%前後

フランスと日本のこの違いは、食文化や衛生観念の影響によるものが大きいようです。
フランスで過ごす日本人妊婦は、日本にいるよりも感染しやすいフランスでの生活は、より一層気をつけなければいけません。

妊娠中にトキソプラズマ症にかかってしまったら

妊婦は抗生物質(スピラマイシンまたはロバマイシン)を処方され、これにより胎児への感染リスクが60%減少するそうです。

また、羊水分析により胎児が先天性トキソプラズマ症かを確認し、陰性の場合はスピラマイシンによる治療は出産まで続けられ、陽性の場合は2つの抗生物質 (ピリメタミンとスルファジアジン)が出産まで処方されます。

先天性トキソプラズマ症の新生児が生まれたら、少なくとも1年間の抗生物質(ピリメタミン/スルホンアミド)治療を受け、定期的に診察を行うことになるようです。

トキソプラズマの感染経路

  • トキソプラズマに感染したばかりの猫のフンや、フンに汚染された土に含まれるオーシスト(トキソプラズマの卵のような形態)が、手などを介して口や目から、またはハエやゴキブリなどを介して食品に運ばれ、侵入する
  • トキソプラズマに感染した動物の体に含まれるシスト(オーシストが発育し、その動物内に形成したトキソプラズマのサナギのような形態)が、加熱処理の不十分な肉などを口にすることで侵入する

ネコ科の動物は、トキソプラズマが有性で増殖する唯一の宿主(終宿主)で、トキソプラズマ症の主な感染源のひとつだと言われています。

猫を飼っている人は不安になりそうな情報ですが、工業製品(キャットフード)だけを食べている完全室内飼いの猫がトキソプラズマ症に感染する可能性はほぼないらしいです。
ネズミが出るような家だとダメそうですが……笑

逆に外飼いの猫や野良猫(特に子猫)は、トキソプラズマに感染した動物の肉(ネズミや鳥などの生肉)を食べて感染していることが考えられるので、そういった猫のフンの始末や、フンがありそうな場所(土、砂場など)には触れないほうが良さそうです。

トキソプラズマ症の予防法

わたしがフランスで看てもらっていたSage femme(助産師)からもらったプリントに書かれていた、トキソプラズマに感染しないように気をつけるべきことは以下です。

  • 肉をよく調理し、燻製肉やよく調理されていないグリルやマリネした肉(ジビエ)は避ける
  • 食事を準備するとき
    ・台所と調理用品を徹底的に洗う
    ・野菜や果物、生肉に触れたあと、また食べる前に手を洗う
    ・野菜や果物、ハーブ類についた土を徹底的に洗う
  • 猫のフンで汚染された可能性のあるものとの接触を避け、それらを扱うときは常に手袋を着用する
  • 土との接触はできるだけ避け、接触するときは手袋を着用し、その後手を洗う

だいたいどの情報を見ても同じようなことが書かれているので、基本的にはこれくらい抑えておけばいいのだと思います。

ただわたしはもう少し詳しく知りたかったので、ここに書かれている以外のことも日仏さまざまなサイトで調べてみました。

  • 肉類の加熱温度と時間について
    加熱温度と加熱時間はサイトによって書いてあることがまちまちでしたが、だいたい中心部の温度が66~70℃以上、時間は10分間。電子レンジによる加熱は内部温度が十分に上昇しないため、あまり勧められる手段ではないらしいです。
    ちなみにうちのSage femmeは60℃と言っていましたが、彼女は非常にテキトーなのでわたしはネットの情報を信じます。笑
  • 冷凍について
    冷凍することによってもトキソプラズマが死滅するらしいのですが、これも書いてあることがサイトによってまちまち。(-10℃で3日間/-20℃で2日間/-12℃以下で24時間/-12℃以下で3日間/-20℃で24時間以上/-20℃で8時間以上/-20℃で20時間/-18℃未満で3日間などなど)
    生ハムを冷凍解凍したら食べられるかもと思い色々調べましたが、一番確実な-20℃が家の冷凍庫で出せる自信がなかった(家庭用冷凍庫の温度は-18℃前後)ので、生ハムは出産まで我慢することにしました。
  • 羊肉(マトン)は避ける
    羊のトキソプラズマ感染率はかなり高いらしいです(フランスでは羊の72%、豚の28%、牛の4%が感染しているとの情報)。
    生で食べることはなくとも、外食時や調理時に神経質にならなければいけないので避けたほうがよさそうです。
  • 羊の生乳、またはそれから作られた乳製品は避ける
    牛の生乳やそのチーズなどからトキソプラズマが感染することは今のところないと考えられているようですが(どちらにしろ妊婦はリステリア菌予防のため避けなければなりませんが)、羊の生乳には注意が必要なようです。
  • 生または調理が不十分なカキやムール貝、アサリは食べない
    →海水がトキソプラズマで汚染されている可能性があるからとの理由のようです。これらもどちらにしろリステリア菌予防のため避けたほうがいいと言われているものです。
  • 生水は避け、ボトル入りの水を飲む
  • 猫のフンの処理方法について
    →屋内外出入り自由の猫(特に子猫)のフンは、手袋を着用し24時間以内に処理し、毎日70℃以上の温水でトイレを洗う。漂白剤などは意味がないそうです。

避けるべき食べ物

  • 生肉
    レアステーキ、タルタルステーキ、ローストビーフ、加熱が不十分なジビエ料理、塩漬け肉(生ハム、生サラミ、生ベーコン、ジャーキー、火を通していないパテ)など
  • 殺菌されていない羊の生乳やチーズ
  • 生または調理が不十分なカキやムール貝、アサリなど
  • その他
    外食ではしっかり洗浄されているかわからないので、生野菜はなるべく避ける

さいごに

わたしももちろんトキソプラズマの免疫がなかったので、感染しないようにするための日常的な作業が増えて地味に大変でした。

例えば、
マルシェなどで野菜を触ったら手をよく洗う。
野菜や果物を生で食べるときはよく洗い、土が付いていそうなところはカットし、酢水でつけ置き洗い(お酢でトキソプラズマは死にませんが、サルモネラ菌には効果あり)。
生肉を切ったまな板や包丁は熱湯消毒、など。

何より、フランスにいるというのにおいしいものが制限されるというのが悲しかったです。
妊娠前にトキソプラズマにかかっていれば……!と何度思ったことか。

出産したら、次に備えてフランスの土でも食べようかな。笑

参考にしたサイト

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