2014.2.6~3.6 ポルトガル、モロッコ、イスタンブールを旅行したときのリスボン~セビージャ~アルヘシラス~タンジェの後編です。
リスボン〜セビージャ〜アルヘシラス〜タンジェ(後編)
船は思っていた以上に大きかった。
内装は大したことないけど大きさはよくある豪華客船にもひけをとらない。
入り口でモロッコの入国カードが配られて、後ろに並んでいた男と喋りながら適当な椅子に座った。
すると、男は入国カードの書き方を教えてやると言って、僕のカードに記入を始めた。
でもこの男が記入したのはデタラメだった。カードはアラビア語とフランス語、小さく英語も書いてあったので僕にも意味は分かった。
男はパスポートナンバーのところに名前、国籍のところに行き先、といったようにめちゃくちゃに記入してくれた挙句、2ユーロよこせと要求してきた(たぶん)。
自分で書けるよ。
分からないふりをすると身振りを交えながら説明してくれた。10分くらい分からないふりを続けると男は諦めてどこかにいった。
新しい入国カードをもらって別の親切なおじさんに聞きながら記入した。
船の一階にモロッコの入国審査所があり、長蛇の列を成している。
15分くらい並んで順番が来た。なんのことはなくまたスタンプが増えた。
やっと落ち着いて席に座ったが、なにか様子がおかしい。
船がまだ動いていなかった。もう16時を過ぎていた。
もともと遅れているから更に遅れただけだろうけど(もともとは14時?15時だっけ?)、2時間かかるみたいなので暗くなる前には着きたいなと思った。
そのあともしばらく船は動かなかった。
乗客はかなり増えていて欧米人もすこしいた。
全員の入国審査を1人の係が捌き(途中でパスポートをめぐって怒鳴り合いの喧嘩があった)、ようやく船が動き出したときには外は暗くなり始めていて、時刻は18時半だった。
タンジェには20時過ぎに到着した。
いとこの寮の本棚に置いてあった「地球の歩き方モロッコ編2007」を船の中で熟読した。
昔の留学生が置いていったものらしい。情報は古いけどちょっとは役に立つと思ってもらってきた。
「歩き方」によると、タンジェの港はメディナ(旧市街)の目の前にある。タクシーやバスがたくさんいるが歩いてメディナに出ることができるらしい。安宿もそのあたりに多いということなのでちょうどよかった。
モロッコはポルトガルと同じ時間で、スペインとは時差がある。19時になった。
船を降りるとバスが待ち構えていた。書いてあるとおりだ。
惑わされまいと歩き始めると、同じ船だった何人かのおっさん達がこれに乗るんだよ!みたいなことを言っている。
港の入口の建物まで行くバスみたいだった。早まりすぎた。
建物の中で荷物検査を受け、両替所でモロッコディルハムにすこし両替した。
「歩き方」にも、港の建物を出て道なりに進むと市街地に出ると図入りで書いてあった。
建物を出て歩き出すとタクシーの客引きがどっと寄ってきた。
「ここからタンジェは56kmあるぞ」
「ここはタンジェじゃないんだ」
適当なことを言ってタクシーに乗せようとする。
20€でタンジェまで行くと言われた。断ると15€まで下がったが、乗る気はなかった。
歩いていると別のタクシーが寄ってきた。
タクシーには乗らないと言うと、またタンジェまでは50kmあるぞと言ってきた。
50kmという響きが流行ってるのかと気になった。
近くの警備員に聞くと、実際かなり遠いと言われた。
ええ?じゃあここはどこなんだ?
疲れもあって段々腹が立ってきた。船の乗客はタンジェに着いたと言っていたのに、いざ降りてみると皆ここはタンジェじゃないと言い張る。さっきまでいた他の乗客はどっかに行ってしまった。
警備員によるとここからタンジェまでバスが出ているみたいだった。やっぱりここはタンジェじゃないのかな。
外はすでに真っ暗だった。建物まで戻って今まさに発車しようとしているバスにタンジェか聞いて飛び乗った。2.5€だった。円安だったし300円以上になる。腑に落ちない。
バスは1時間くらい暗い山道を走って市街地に着いた。
まさかこんなに遠いとは!
バスを降りると例によってタクシードライバーたちが集まってきた。
現在地が全くわからず困っていると、東洋人のカップルが同じバスから出てきた。
英語がペラペラの香港人で、ここはタンジェだけど街の中心ではないということを教えてくれた。同じくバスから降りてきたイタリア人二人組とタクシーでどこかに行くらしかった。
ここがタンジェだということは分かった。あとはメディナを目指すだけだ。やっと終わりが見えてきた。
屯していたタクシードライバーの一人にメディナの方向を聞くと、歩いて連れて行ってやると言われた。
金が無いから、チップはあまり払わないので方向だけ教えてほしいと言った。
でも男はすでに歩き始めていて、こちらを振り返ってニコニコしながら手招きしていた。
移動に疲れていて早く宿を見つけたかったので黙ってついていくことにした。さっきは人の言うことを聞かなかったせいで無駄に時間をかけてしまったし。
それにしても、タクシーは路駐のままでいいの??
30分くらい歩いてメディナの入り口に着いた。
その間、男はニコニコしながら癖のある英語で永遠と喋り続け、僕は永遠と相槌を打ち続けた。打って打って、とにかく打ちまくった。あのときは適当ですみません。
こんなに歩くと思ってなかった。タクシー置きっぱなしだし。
男が紹介してくれたのはメディナの入り口から数分のところにあるmamora hotelというホテルで一泊シングル100DH(約1200円)だった。ちょっと高い。
ムダに最後の粘りを見せて、近所の数軒を周った。
案の定いいところはなくて、二泊を約束にディスカウントしてもらって一泊90DHでmamora hotelに決めた。
案内してくれた男は20DHを要求してきた。
もしかしてタクシーに乗っても変わらなかった?着いたばかりで相場が分からなかった。
ちなみに、こんなにケチっているのには理由がある。
今回の1か月の旅の資金が6万円しか貯まらなかった(航空券は別、63000円のエミレーツで羽田→リスボン、イスタンブール→羽田)からだ。色々原因はあるけど、ないものはないのでこれでいく。
ポルトガルにいた1週間はほとんどお金がかからなかったしなんとかなるかな、と思っている。
来月になれば最後のバイト代が入るのでクレジットカードも数万円なら使える。それにしても海外キャッシングできないのは痛い。
近所の売店でコーラとパンを買ってその場で食べた。
水シャワーを浴びる気にはならなかったので、そのまま寝ることにした。
あー疲れた。
でもおもしろかった。楽しかった。
後日談
「地球の歩き方」は2007年のもので、実際に行った2014年にはアルヘシラスからの船が到着する港が新しい場所に移転していた。そこは市街地からは50kmくらい離れていて、バスやタクシーで行くということだった。
この旅行中に出会った人から2014年の「歩き方」を見せてもらって初めて知った。
古いのを分かっていて持ってきたはずが、なんであんなに信じ込んでいたのかは自分でも分からない。。
TRANSIT(トランジット)22号 美しきスペイン (講談社 Mook(J))
Comments